NISAの信託報酬とは?0.1%と1%で20年後はいくら変わるか

NISAの信託報酬と長期的な費用差を考えるイメージ NISA・資産形成

投資信託の商品画面には、小さな数字が並んでいます。

「信託報酬:年0.○○%」

初めて見たとき、私はこの数字をそれほど気にしていませんでした。1%にも満たないなら、ほとんど誤差ではないか。そう思っていたからです。

しかし、信託報酬は商品を持っている間、継続的に差し引かれます。毎月積み立て、10年、20年と保有するなら、小さな割合の差も少しずつ積み重なります。

私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得した現在も、数百万円単位の負債を返しながら、お金について学び続けています。

使えるお金に限りがあるからこそ、派手な運用成績だけでなく、確実に発生する費用も確認したい。

この記事では、NISAで投資信託を選ぶ前に知っておきたい信託報酬の仕組みと、商品画面で確認したい項目を整理します。

先に結論:同じ投資対象なら費用も比較する

  1. 信託報酬は保有中に継続して差し引かれる
  2. 手元から直接支払うのではなく、信託財産から差し引かれる
  3. 長期保有では小さな料率差も積み重なる
  4. 信託報酬だけでなく、総経費率も確認する
  5. 投資対象が異なる商品を、手数料だけで比較しない

同じ指数への連動を目指すインデックスファンドが複数ある場合、信託報酬は比較項目の一つになります。ただし、最も安い商品を機械的に選べばよいわけではありません。

信託報酬とは何か

信託報酬は、投資信託を保有している間に負担する運用管理費用です。

支払先 主な役割
運用会社 投資先の選定や運用方針の実行
販売会社 口座管理、分配金の支払い、書類交付など
信託銀行 資産の管理・保管、基準価額の算出など

信託報酬がどこへ、どの程度支払われるかは「交付目論見書」に記載されています。投資信託協会も、信託報酬は運用期間中に信託財産から間接的に支払われる費用だと説明しています。投資信託協会「よくあるご質問」

銀行口座から引き落とされるわけではない

信託報酬の請求書が自宅に届いたり、証券口座の現金残高から年に一度まとめて引かれたりするわけではありません。投資信託の資産から日々差し引かれ、基準価額に反映されます。

無料に見えても、実際には商品の中から少しずつ支払っている。信託報酬は、そういう費用です。

投資信託には3つの場面で費用がかかる

購入するとき
購入時手数料
保有している間
信託報酬・その他費用
売却するとき
信託財産留保額など

すべての商品に、すべての費用があるわけではありません。購入時手数料が無料の商品は「ノーロード」と呼ばれます。NISAのつみたて投資枠では、対象となる公募株式投資信託は販売手数料がかからないことが要件になっています。

年0.1%なら、いくら負担するのか

投資信託の残高が100万円で、信託報酬が年0.1%なら、単純計算による年間費用は約1,000円です。

100万円 × 0.1% = 年間約1,000円

投資信託の残高 年0.1% 年0.5% 年1%
100万円 約1,000円 約5,000円 約1万円
300万円 約3,000円 約1万5,000円 約3万円
500万円 約5,000円 約2万5,000円 約5万円
1,000万円 約1万円 約5万円 約10万円

※一定の残高を1年間保有した場合の単純計算です。実際の残高や基準価額は日々変動するため、実額とは一致しません。

年0.1%と1%で20年後はいくら変わるか

毎月1万円を20年間積み立て、費用を差し引く前の運用利回りを年5%と仮定します。

信託報酬 20年後の概算額 年0.1%との差
年0.1% 約406万円
年0.3% 約397万円 約9万円
年0.5% 約388万円 約18万円
年1.0% 約367万円 約39万円

月1万円を20年間積み立てた概算額

0.1%406万円
0.5%388万円
1.0%367万円

費用控除前年率5%、毎月末積立の共通条件による概算

毎月の積立元本は240万円です。年0.1%と年1%では、20年後の概算額に約39万円の差が生じました。毎月3万円なら同じ条件で差は約119万円です。

信託報酬 月3万円を20年間積み立てた概算額
年0.1% 約1,219万円
年0.5% 約1,164万円
年1.0% 約1,100万円

※毎月末に積み立て、費用控除前の年率5%から信託報酬を単純に差し引き、月次換算して運用収益を再投資する前提の概算です。購入時手数料、信託財産留保額、税金、その他費用、実際の値動きは考慮していません。

NISAなら信託報酬を気にしなくてもよいのか

NISAは投資から得た利益が非課税になる制度であり、手数料が無料になる制度ではありません。NISA口座で保有していても、信託報酬などの商品固有の費用は発生します。

金融庁が2026年7月24日時点で集計した概要資料によると、つみたて投資枠の対象商品は360本です。

投資対象 信託報酬率の平均 法令上の上限
国内 年0.27% 年0.5%
内外・海外 年0.34% 年0.75%

いずれも税抜きです。出典:金融庁「つみたて投資枠対象商品の分類(2026年7月24日時点)」

なお、個別商品の届出一覧は、その後の2026年7月30日に更新されています。対象商品は随時追加・変更される可能性があるため、購入前に金融庁の最新一覧をご確認ください。

「信託報酬が安い商品=良い商品」ではない

費用は低い方が運用成果に残りやすくなります。しかし、国内株式の指数に連動する商品と、世界各国の株式と債券へ分散する商品では役割が違います。

費用を比べるなら、同じ資産、同じ指数、同じ為替ヘッジ、近い分配方針の商品同士で行います。同じ目的の商品を複数見つけたとき、初めて信託報酬の差が意味を持ちます。

信託報酬だけでは分からない「その他費用」

  • 株式や債券を売買する際の委託手数料
  • 海外資産の保管費用
  • 監査費用
  • 法定書類の作成・印刷費用
  • 投資先ファンドに支払う費用

こうした費用は、あらかじめ正確な金額を示せないことがあります。実際に発生した費用は、運用報告書の費用明細で確認できます。

総経費率とは

総経費率は、信託報酬に加えて、投資信託の運用中に発生したその他費用を含めた比率です。信託報酬が商品の予定表だとすれば、総経費率は実際の運用後に分かる費用の記録に近いものです。

ただし、売買委託手数料や有価証券取引税など、総経費率とは別に表示される費用もあります。

信託報酬はどこで確認できるのか

1.証券会社の商品画面

商品詳細の「手数料」「ファンド情報」「費用」といった項目に掲載されています。税抜きか税込みかも確認します。

2.交付目論見書

購入前に確認する公式書類です。「手続・手数料等」や「ファンドの費用・税金」で、購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額、その他費用を確認します。

3.運用報告書

運用実績がある商品では、総経費率、1万口当たりの費用明細、売買委託手数料などを確認できます。

購入前
交付目論見書で
信託報酬を確認
運用後
運用報告書で
総経費率を確認

初心者が商品を比べるときの6項目

確認項目 見る理由
投資対象 どの国・資産へ投資するか
連動する指数 同じ目的の商品か
信託報酬 保有中の継続的な費用
総経費率 実際に発生した費用
純資産総額 商品の規模と資金流入
信託期間・償還日 長期保有できる設計か

手数料を気にしすぎて始められない場合は

信託報酬が年0.01%違う。別の商品では、さらに年0.02%安い。調べ始めると、数字の小さな差が気になってきます。

しかし、積立を始められないまま何カ月も比較し続けるなら、費用を調べること自体が新しい足踏みになるかもしれません。

  • 投資対象を先に決める
  • つみたて投資枠対象商品から探す
  • 同じ指数の商品を2~3本比較する
  • 信託報酬と総経費率を確認する
  • 理解できない商品は急いで買わない

私が費用を確認するようになった理由

負債を返していると、月1,000円、2,000円という金額にも以前とは違う重さを感じます。だからといって、最も安い商品だけを追いかけたいわけではありません。

確実に発生するものを、分からないままにしたくない。

信託報酬を調べることは、未来の運用成績を当てる作業ではありません。自分が負担する費用を確認する作業です。

大きく増える商品を探すより、まず何にいくら払っているかを知る。お金を学び直すとき、その順番は案外大切なのだと思います。

今日できること

  1. 商品が投資している国・資産を見る
  2. 信託報酬の年率を確認する
  3. 運用報告書に記載された総経費率を見る

これから始める人は、購入する必要はありません。気になる商品を一つ選び、交付目論見書の「ファンドの費用・税金」を開いてみる。数字を覚えることより、自分で確認できる場所を知ることが、今日の一歩です。

参照した一次情報

ご注意

本記事は、2026年8月3日時点で確認できる金融庁および投資信託協会の公表情報をもとに作成しています。対象商品数と信託報酬率の平均は、金融庁が公表した2026年7月24日時点の概要資料によるものです。シミュレーションは一定条件による概算であり、将来の運用成果や費用を保証するものではありません。購入前に最新の交付目論見書、契約締結前交付書面、運用報告書をご確認ください。

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