銀行口座に、しばらく使う予定のないお金がある。
投資信託へ回すほどの覚悟はないけれど、普通預金に置いたままというのも、少しもったいない気がする。
そんなときに候補へ入ってくるのが、個人向け国債です。
名前はよく聞きますが、株式や投資信託ほど話題にはなりません。値上がりによって資産が何倍にもなる商品ではないので、SNS映えもしにくい。実に地味です。
ただ、老後資金づくりでは、「増やすお金」だけでなく「減らしたくないお金」の置き場所も必要になります。
私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、お金について学び直しています。
同時に、数百万円単位の負債を返しながら、家族の生活と将来の資産形成を両立しようとしている当事者でもあります。
この記事では、個人向け国債の基本的な仕組み、3種類の違い、預金・投資信託との使い分けを整理します。
先に結論:個人向け国債は「大きく増やす」より「減らさず待つ」ための商品
個人向け国債は、日本国政府が発行する、個人が購入しやすいように設計された債券です。
債券とは、国や企業などがお金を借りるために発行するものです。個人向け国債を購入することは、簡単にいえば国へお金を貸すことです。
国は、その対価として半年ごとに利子を支払い、満期になると元本を返します。
- 1万円から1万円単位で購入できる
- 半年ごとに年2回、利子を受け取れる
- 元本部分の価格は変動しない
- 最低金利として年0.05%が保証される
- 発行後1年を過ぎれば中途換金できる
- 毎月募集されている
財務省は、満期時の元本と半年ごとの利子は国が責任を持って支払い、実勢金利が動いても元本部分の価格は変動しないと説明しています。
一方で、株式や投資信託のような大きな値上がりは期待できません。個人向け国債は、資産を積極的に増やす商品というより、当面使わないお金を比較的安全に待機させる商品です。
個人向け国債には3種類ある
| 商品 | 満期 | 金利 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 10年 | 半年ごとに見直し | 市場金利が上がると適用利率も上がる可能性がある |
| 固定5年 | 5年 | 購入時から固定 | 5年間の利率が購入時に決まる |
| 固定3年 | 3年 | 購入時から固定 | 3年間の利率が購入時に決まる |
3種類とも、最低購入額、中途換金の条件、最低金利は基本的に共通しています。大きな違いは、満期までの期間と金利が変わるかどうかです。
変動10年
変動10年は、半年ごとに適用利率が見直されます。利率は、基準金利に0.66を掛けて計算されます。ただし、計算結果が低くなっても年0.05%の最低金利が保証されます。
変動10年の適用利率 = 基準金利 × 0.66
市場金利が上昇すれば、次回以降に受け取る利子が増える可能性があります。反対に、市場金利が下がれば、適用利率も下がります。
「10年」と付いていますが、必ず10年間持ち続けなければならないわけではありません。発行後1年を過ぎれば、中途換金ができます。
固定5年
固定5年は、購入時に決まった利率が5年間変わりません。購入時点で、満期まで保有した場合の利子を見通しやすい点が特徴です。
購入後に市場金利が下がっても、適用利率は変わりません。一方、市場金利が上昇しても、購入済みの固定5年の利率は上がりません。
固定3年
固定3年も、購入時の利率が満期まで続きます。固定5年より期間が短いため、3年程度先に使う予定があるお金と合わせやすい商品です。
ただし、「3年後に使うから固定3年」と期間だけで決めるのではなく、発行後1年間は原則として中途換金できない点を確認しておく必要があります。
2026年8月募集分の金利はいくらか
2026年8月6日から8月31日まで募集されている個人向け国債の利率は、次のとおりです。
| 商品 | 税引前の年利率 | 税引後の年利率 |
|---|---|---|
| 変動10年・第197回 | 1.87% | 1.4901095% |
| 固定5年・第185回 | 2.06% | 1.6415110% |
| 固定3年・第195回 | 1.71% | 1.3626135% |
固定5年の年2.06%と固定3年の年1.71%は、満期まで変わりません。変動10年の年1.87%は初回の適用利率です。半年後も同じ利率とは限りません。
金利は募集月によって変わります。この記事を後から読む場合は、財務省の現在募集中の個人向け国債で最新条件を確認してください。
100万円を購入すると利子はいくらになるか
2026年8月募集分を100万円購入し、現在の利率が1年間続いたと仮定します。
| 商品 | 年間利子・税引前 | 年間利子・税引後 |
|---|---|---|
| 変動10年・年1.87% | 1万8,700円 | 約1万4,901円 |
| 固定5年・年2.06% | 2万600円 | 約1万6,415円 |
| 固定3年・年1.71% | 1万7,100円 | 約1万3,626円 |
100万円 × 2.06% = 年間利子2万600円(税引前)
国債の利子には、原則として20.315%の税金がかかります。
2万600円 ×(1-20.315%) = 約1万6,415円(税引後)
実際の利子は半年ごとに支払われます。変動10年は半年ごとに適用利率が変わるため、将来の年間利子は確定していません。
「元本割れしない」とはどういう意味か
個人向け国債は、満期まで保有すれば額面金額で償還されます。中途換金する場合も、額面金額そのものが市場価格によって90万円や80万円へ下がる仕組みではありません。
一般的な債券は、市場金利の変化などによって売買価格が動きます。しかし、個人向け国債は、国による中途換金の仕組みが設けられています。この点が、通常の債券や債券型投資信託との大きな違いです。
ただし、「どのような状況でも絶対に安全」という意味ではありません。個人向け国債は日本国が元本と利子を支払う金融商品です。理論上は、日本国が支払いを行えなくなる信用リスクまで完全にゼロとはいえません。
また、金額として元本が戻っても、物価が上昇すれば、そのお金で買える商品の量は減ります。100万円が10年後も100万円で戻ってきたとしても、物価が10年間で20%上昇していれば、実質的な購買力は低下しています。
個人向け国債は値下がりを抑える商品ではありますが、インフレから資産価値を完全に守る商品ではありません。
発行後1年間は原則として換金できない
個人向け国債の注意点として、最も重要なのが換金制限です。原則として、発行から1年が経過するまでは中途換金できません。
例外として、保有者本人が亡くなった場合や、災害救助法の適用対象となる大規模な自然災害で被害を受けた場合は、1年以内でも換金できることがあります。
発行後1年を過ぎれば、1万円単位で一部または全部を中途換金できます。
つまり、来月の生活費や、半年後に支払う税金を置いておく商品ではありません。「安全だから」と生活防衛資金をすべて個人向け国債へ移すと、急に現金が必要になったときに困ります。
中途換金すると直前2回分の利子相当額が差し引かれる
発行から1年を過ぎて中途換金する場合、元本から一定の調整額が差し引かれます。
中途換金調整額 = 直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685
簡単にいえば、受け取った直近1年分の税引後利子に近い金額を返す仕組みです。そのため、発行後1年で換金すると、受け取った利子の大部分が調整され、運用益はほとんど残りません。
ただし、通常の中途換金では、調整額のために額面金額を下回るわけではありません。
個人向け国債と銀行預金の違い
個人向け国債は、銀行預金ではありません。
| 比較項目 | 普通預金・定期預金 | 個人向け国債 |
|---|---|---|
| お金を預ける相手 | 金融機関 | 日本国政府 |
| 元本の保護 | 預金保険制度 | 国が元本・利子を支払う |
| 保護範囲 | 原則1金融機関1人当たり元本1,000万円と利息 | 預金保険制度の対象ではない |
| 使いやすさ | 普通預金は随時引き出せる | 発行後1年間は原則換金不可 |
| 金利 | 金融機関・商品による | 毎月の発行条件による |
| 最低購入額 | 商品による | 1万円 |
| 利払い | 商品による | 半年ごと |
利息の付く普通預金や定期預金は、1金融機関につき預金者1人当たり、元本1,000万円までと破綻日までの利息が預金保険制度で保護されます。
出典:金融庁「預金保険制度」
個人向け国債は預金保険制度で守られるのではなく、日本国が元本と利子の支払いを行います。購入した銀行や証券会社が破綻しても、国債の権利は保護され、別の取扱機関へ口座を移すことができます。
個人向け国債と投資信託の違い
| 比較項目 | 個人向け国債 | 投資信託 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 元本を維持しながら利子を受け取る | 値上がりや分配金による資産形成 |
| 価格変動 | 元本部分は原則変動しない | 日々変動する |
| 元本保証 | 国が額面で償還 | なし |
| 期待できる収益 | 比較的小さい | 国債より大きい可能性がある |
| 換金 | 発行後1年以降 | 通常は売却可能 |
| NISA | 個人向け国債は対象外 | 対象商品なら利用可能 |
NISAは、投資による利益を非課税にする制度です。個人向け国債をNISA口座で直接購入することはできません。
一方、NISAの対象となる投資信託の中には、債券を組み入れている商品もあります。ただし、債券を組み入れた投資信託は価格が変動します。「債券」という言葉が入っていても、個人向け国債と同じように元本が維持されるわけではありません。
個人向け国債のメリット
1.元本部分の価格が変動しない
市場価格の下落を理由に、受取額が減る仕組みではありません。数年後に使う予定があり、大きく減らしたくないお金の置き場所として検討できます。
2.1万円から購入できる
まとまった資金がなくても、1万円単位で始められます。毎月発行されているため、一度に全額を購入せず、購入時期を分けることもできます。
3.金利には下限がある
3種類とも、年0.05%の最低金利が設けられています。変動10年では、市場金利が上昇した場合、半年ごとの利率見直しによって受取利子が増える可能性があります。
4.購入先が破綻しても権利が保護される
購入した金融機関が破綻しても、国債自体がその金融機関の財産になるわけではありません。国債の権利は口座上の記録によって管理され、別の取扱機関へ移せます。
個人向け国債のデメリット
1.発行後1年間は原則として換金できない
普通預金のように、必要なときすぐ引き出せるお金ではありません。生活防衛資金の全額を入れるのには向きません。
2.中途換金すると利子が調整される
1年を過ぎれば元本を換金できますが、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。短期間で換金する可能性が高いなら、普通預金や定期預金の方が使いやすい場合があります。
3.大きな値上がりは期待できない
個人向け国債は、株式のように価格が2倍、3倍になる商品ではありません。老後まで長い期間があり、資産を積極的に増やしたいお金については、国債だけでは十分な成長を期待しにくいでしょう。
4.インフレに負ける可能性がある
国債の利率より物価上昇率が高ければ、実質的な購買力は下がります。固定3年・固定5年は、購入後に市場金利や物価が上昇しても、受取利率は変わりません。
5.金融機関によって口座管理手数料が異なる
購入時の取引手数料は原則としてかかりませんが、金融機関によっては口座開設や維持に手数料がかかる場合があります。購入先を選ぶときは、キャンペーンだけでなく、口座管理料や中途換金の手続きも確認します。
変動10年・固定5年・固定3年はどれがよいか
金利上昇への対応を重視するなら変動10年
変動10年は、半年ごとに利率が見直されます。これから市場金利が上昇した場合、その動きを一定程度反映できる点が特徴です。満期は10年ですが、発行後1年を過ぎれば中途換金できます。
5年間の利率を固定したいなら固定5年
購入時点の利率を5年間確保したい場合は、固定5年が候補になります。今後市場金利が下がれば購入時の利率を維持できますが、金利が上がっても利率は変わりません。
3年程度先に使う予定なら固定3年
3年後に車の買い替え、住宅関連費用、子どもの進学などを予定している場合、固定3年は期間を合わせやすい商品です。ただし、予定が1年以内へ早まる可能性があるなら、国債へ入れる金額は慎重に決めます。
ファイナンシャルプランにどう組み込むか
個人向け国債は、すべての預金や投資を置き換える商品ではありません。お金を「いつ使うか」で分けると、役割が見えてきます。
| 使う時期 | お金の置き場所の例 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 日常~1年以内 | 普通預金 | 生活費・緊急支出 |
| 1~3年程度 | 定期預金・個人向け国債 | 近い将来の予定資金 |
| 3~10年程度 | 個人向け国債・預金 | 減らしたくない中期資金 |
| 10年以上先 | NISA・iDeCo・投資信託など | 長期の資産形成 |
これは厳密な正解ではなく、お金の役割を整理するための一例です。
生活防衛資金は普通預金を基本にする
病気、失業、家電の故障などに備えるお金は、すぐ引き出せることが重要です。個人向け国債は発行後1年間換金できないため、生活防衛資金の全額を移すのには向きません。
まず普通預金に必要額を残し、その上で当面使わない部分があれば国債を検討します。
数年後に使うお金は、投資信託より国債が合う場合がある
3年後に必要な住宅購入資金を株式投資信託で運用すると、使う直前に相場が下落する可能性があります。そのお金を予定どおり使うことが優先なら、値上がりを狙うより、元本を維持することの方が重要です。
個人向け国債は、このような「使う時期が見え始めたお金」の受け皿になり得ます。
老後まで時間があるお金は、国債だけに偏らせない
現在40代で、老後まで20年前後ある場合、老後資金をすべて個人向け国債へ置くと、物価上昇に追いつけない可能性があります。
長期で増やす部分は、NISAや企業型DC、iDeCoなどを使った分散投資を検討する。定年前後に使う部分は、徐々に預金や個人向け国債へ移す。
「国債か投資信託か」の二者択一ではなく、使う時期に応じて両方を持つ考え方です。
負債がある場合は借入金利と比較する
私自身、数百万円単位の負債を返しています。その立場から見ると、国債の金利だけを見て購入を決めることはできません。
例えば、借入金利が年5%で、国債の税引後利率が年1%台なら、余剰資金を国債へ回すより、借金を返して将来の利息を減らす方が家計改善効果は大きくなりやすいでしょう。
ただし、手元資金をすべて返済に回すと、急な支出で再び借りることにもなりかねません。
- 日常生活に必要な普通預金を残す
- 契約どおりの返済を続ける
- 借入金利と国債の税引後利率を比較する
- 返済後も残る中期資金について国債を検討する
- 長期資金はNISAやDCなどとの配分を考える
個人向け国債は、返済より先に買わなければならない商品ではありません。家計全体の中で、守るべきお金が明確になったときに初めて役割が生まれます。
個人向け国債はどこで買えるか
- 証券会社
- 銀行
- 信用金庫
- 信用組合
- ゆうちょ銀行
- 農協など
金融機関によって、窓口だけで扱う場合と、インターネットで購入できる場合があります。購入には国債を管理する口座が必要です。本人確認書類やマイナンバー確認書類などを求められます。
同じ回号の個人向け国債であれば、どの金融機関で購入しても国債の利率自体は同じです。違いが出るのは、口座管理料、ネット手続き、中途換金の方法、キャンペーンなどです。
財務省の取扱金融機関一覧から確認できます。
今日できること
今日は、国債を購入する必要はありません。
まず、現在の預金を次の3つに分けてみてください。
1年以内に使うお金: 1~10年以内に使うお金: 10年以上使わないお金:
次に、1~10年以内に使うお金の中から、「発行後1年間は動かせなくても困らない金額」があるか確認します。その金額が、個人向け国債を検討できる上限です。
普通預金には、すぐ使える強さがある。
投資信託には、時間をかけて増やせる可能性がある。
そして個人向け国債には、その間で静かに待てる強さがあります。
大切なのは、最も金利の高い商品を探し続けることではありません。
使う時期に合った場所へ、お金を置いておくことです。
本記事は2026年8月27日時点で確認できる財務省および金融庁の公表情報をもとに、個人向け国債の一般的な仕組みをまとめたものです。個人向け国債の利率、募集期間、取扱金融機関は募集月によって変わります。変動10年の適用利率は半年ごとに見直されます。また、発行後1年間は原則として中途換金できず、中途換金時には所定の調整額が差し引かれます。本記事は特定の商品や金融機関への投資を推奨するものではありません。購入前に財務省の最新情報と取扱金融機関の契約締結前交付書面をご確認ください。


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