「iDeCoは節税になる」
制度を調べると、必ずと言ってよいほど出てくる言葉です。
でも、私が最初に分からなかったのは、その次でした。
「それで、自分の場合はいくら変わるのだろう?」
月1万円を積み立てたら1万円税金が戻るわけではありません。一方、「年収600万円だから節税額は○万円」と単純に決まるものでもありません。
私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得した現在も、数百万円単位の負債を返しながら、お金について勉強を続けています。
だからこそ、「節税になる」という言葉だけで掛金を増やすのではなく、実際の仕組みを理解したうえで家計に合う金額を考えたい。
今回は、iDeCoの節税効果を月5,000円・1万円・2万円の3パターンで整理します。
先に結論:節税額は「掛金×税率」で変わる
iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。
国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトでは、基本的な考え方を次のように説明しています。
≒ 税負担の軽減額
例えば、月1万円なら年間掛金は12万円。所得税率10%、住民税率10%という単純な例なら、
となります。これはiDeCo公式サイトでも示されている計算例です。
ただし、大切なのは「自分の所得税率が何%なのか」。同じ月1万円でも、全員の節税効果が2万4,000円になるわけではありません。
月5,000円・1万円・2万円ならいくら変わる?
分かりやすくするため、住民税率を10%と仮定し、所得税率別に概算してみます。
| 月額掛金 | 年間掛金 | 所得税5% | 所得税10% | 所得税20% |
|---|---|---|---|---|
| 5,000円 | 6万円 | 約9,000円 | 約1万2,000円 | 約1万8,000円 |
| 1万円 | 12万円 | 約1万8,000円 | 約2万4,000円 | 約3万6,000円 |
| 2万円 | 24万円 | 約3万6,000円 | 約4万8,000円 | 約7万2,000円 |
※住民税率10%と仮定した単純計算です。復興特別所得税、各種控除、税額控除などの個別事情は考慮していません。実際の税額とは異なる場合があります。
ここで注意したいのは、「月2万円なら7万2,000円お得」という意味ではないことです。所得税率が20%の人を想定した一例にすぎません。
「年収600万円なら何万円節税」と言い切れない理由
ここは、私自身も勉強していて混乱しやすかった部分です。
所得税率を決めるのは、単純な額面年収ではありません。
給与収入から給与所得控除などを差し引き、さらに社会保険料控除、基礎控除、扶養控除、iDeCoなどの所得控除を反映した「課税所得」をもとに計算します。
国税庁が公表している所得税率は、課税所得に応じて5%から45%までの段階があります。国税庁「所得税の税率」
つまり、「年収600万円だから所得税率は必ず20%」とは言えません。家族構成や社会保険料、各種所得控除によって違ってくるからです。
年収だけを入力したネット上の節税シミュレーションは便利ですが、まず「概算」と考えておいた方がよいでしょう。
iDeCoでは、なぜ税負担が軽くなるのか
例えば、年間の課税対象となる所得が300万円だった人が、iDeCoへ年間12万円拠出したとします。
↓
iDeCoへ年間12万円:課税対象 288万円
12万円がそのまま返ってくるのではありません。税金を計算するときの所得から12万円を差し引ける。
ここを理解すると「掛金=節税額」という誤解を避けやすくなります。
国税庁も、iDeCoの掛金を小規模企業共済等掛金控除の対象としています。国税庁「小規模企業共済等掛金控除」
iDeCoには掛金控除以外の税制上の特徴もある
1.掛金を拠出するとき
掛金全額が所得控除の対象になります。今回の記事で計算しているのは、主にこの部分です。
2.運用しているとき
通常、金融商品の運用益には税金がかかりますが、iDeCo内の運用益は非課税で再投資されます。
3.受け取るとき
一時金で受け取る場合には退職所得控除、年金形式では公的年金等控除の対象となる場合があります。
ただし、「受取時も必ず税金ゼロ」という意味ではありません。勤務先の退職金や他の年金、受取方法・時期などによって税額が変わるため、受取時の課税は別に考える必要があります。
3つの税制についてはiDeCo公式FAQで確認できます。
節税されたお金は、いつ戻ってくるのか
ここも少し誤解しやすいところです。iDeCoへ拠出した瞬間に銀行口座へ税金が振り込まれるわけではありません。
会社員の場合、掛金の納付方法によって手続きが異なります。
iDeCoの掛金はどう払っている?
| 個人払込 | 事業主払込 |
|---|---|
| 自分の口座から支払う | 給与から掛金を控除 |
| ↓ | ↓ |
| 控除証明書が発行 | 給与計算で反映 |
| ↓ | ↓ |
| 年末調整・確定申告 | 原則、本人向け証明書なし |
個人払込の場合
自分の口座から掛金を支払っている場合、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が発行されます。これを年末調整または確定申告で使用します。
iDeCo公式FAQでは、個人払込の場合、原則として毎年10月に証明書を送付すると案内しています。
事業主払込の場合
給与から掛金が控除される事業主払込では、会社が給与計算時に掛金を考慮して源泉徴収税額を計算します。この場合、原則として本人向けの小規模企業共済等掛金払込証明書は発行されません。
「iDeCoをやっているから自動的に全員同じ年末調整をする」というわけではない点には注意が必要です。
節税になるなら、上限まで入れた方がいい?
私は、ここで一度立ち止まりたいと思っています。
税負担が軽くなるなら、掛金をできるだけ増やしたくなります。しかしiDeCoには、大きな特徴があります。
原則として60歳になるまで資産を自由に引き出せません。
月2万円なら年間24万円。10年間なら掛金だけで240万円です。
税制上のメリットがあっても、その間に住宅修繕、教育費、病気、失業などで現金が必要になる可能性はあります。
私自身、数百万円単位の負債を返しています。
↓
急な支出に備える現金
↓
負債返済
↓
60歳まで使わなくてもよいお金
↓
iDeCoを検討
月2万円の節税効果が大きくても、今の生活が苦しくなるなら、本末転倒です。
月5,000円から考えてもいい
iDeCoの掛金は月5,000円から設定でき、その後は1,000円単位で設定できます。
掛金額には加入区分や勤務先の企業年金制度による上限があります。また、掛金額の変更には制度上のルールがあります。
最新の加入条件についてはiDeCo公式サイトを確認してください。
大切なのは、税制メリットを最大化することではありません。60歳まで使わなくても家計が困らない金額を考えることです。
例えば月5,000円なら年間6万円。所得税率10%、住民税率10%の単純計算なら、税負担の軽減は年間約1万2,000円です。
それでも「意味がない」とは私は思いません。制度を理解し、家計への影響を経験しながら、後で増額するという考え方もあります。
NISAとiDeCo、節税だけならiDeCo?
これも単純には比較できません。NISAとiDeCoでは、そもそもの税制上の役割が違います。
| NISA | iDeCo | |
|---|---|---|
| 掛金・投資額の所得控除 | なし | あり |
| 運用益 | 非課税 | 非課税 |
| 途中売却・引き出し | 可能 | 原則60歳まで不可 |
| 主な用途 | 幅広い資産形成 | 老後資金形成 |
iDeCoには掛金の所得控除があります。一方、NISAには途中で資産を売却して現金化できる柔軟性があります。
「節税額が大きい方を選ぶ」のではなく、いつ使うお金なのか、現金は十分あるか、負債はあるか、60歳まで使わなくても困らないかまで含めて考える必要があります。
私がiDeCoの節税額より先に確認したいこと
金融を勉強する前の私は、「得」という言葉を見ると、その数字ばかり気にしていました。
ポイント還元率。
運用利回り。
節税額。
でも、負債を抱えてから、お金を見る順番が少し変わりました。
いくら得するかより、そのお金を動かしても生活が崩れないか。
iDeCoの節税は魅力的な仕組みです。それでも、将来の税負担を減らすために、今日使える現金を不足させる必要はありません。
制度を知ることと、制度を最大限使うことは別です。自分と家族の生活を守れる範囲で使う。
それが、今の私にとってのお金の「再履修」です。
今日できること
今日はiDeCoへ申し込まなくて構いません。
給与明細か源泉徴収票を用意して、まず次の3つを確認してみてください。
- 自分が現在iDeCoへ加入しているか
- 加入しているなら毎月の掛金はいくらか
- 源泉徴収票にiDeCoの控除が反映されているか
これから始める人なら、月5,000円・1万円・2万円の年間掛金だけ計算してみます。
月1万円 → 年12万円
月2万円 → 年24万円
まず「年間いくらのお金を60歳までの資産形成へ回すのか」を見る。節税額を計算するのは、その次で十分です。
参照した一次情報
本記事は2026年8月7日時点の国民年金基金連合会・国税庁等の公表情報をもとに、iDeCoの税制について一般的な内容をまとめたものです。掲載した節税額は一定条件による概算で、実際の税額は所得、各種控除、住民税、復興特別所得税などによって異なります。また、iDeCoは原則60歳まで資産を引き出せず、運用商品には元本割れの可能性があります。個別の税務については税務署・税理士等へご確認ください。


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