ねんきん定期便やねんきんネットに表示される年金見込額と、実際に銀行口座へ振り込まれる金額は同じとは限りません。老齢年金からは、所得や年齢、住んでいる自治体などに応じて、税金や社会保険料が差し引かれることがあります。
私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、数百万円単位の負債を返しています。
老後資金を考えるときも、大きな目標額を置く前に、毎月いくら入り、いくら出ていくのかを確かめたい。この記事では、年金から引かれる主なお金と、手取りを使って老後の家計を考える方法を整理します。
先に結論:老後の家計は「年金の額面」ではなく手取りで考える
老齢年金から差し引かれる可能性があるのは、主に次の5項目です。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 個人住民税・森林環境税
- 介護保険料
- 国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
年金の額面から手取りになるまで
年金支払額
↓
介護・医療保険料を控除
↓
所得税・住民税などを控除
↓
控除後振込額
すべての人から同じ金額が引かれるわけではありません。年金以外の所得、扶養家族、各種所得控除、居住自治体、健康保険の種類などによって変わります。「額面の何%が手取りになる」と一律には決められません。
年金から引かれる5つのお金
1.所得税
老齢基礎年金や老齢厚生年金は「公的年金等に係る雑所得」として扱われます。年金収入から公的年金等控除を差し引き、さらに基礎控除や配偶者控除などを反映して税額を計算します。
年金の支払い時には、各種控除後の金額に対して、原則5.105%の税率で所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。対象となる年金額の目安は、65歳未満では年額108万円以上、65歳以上では年額158万円以上です。ただし、扶養親族等申告書の提出状況や控除によって実際の税額は変わります。
2.復興特別所得税
復興特別所得税は所得税額に加算される税金です。年金振込通知書では、所得税と合わせて「所得税額および復興特別所得税額」と表示されます。
3.個人住民税・森林環境税
一定の条件を満たす場合、住民税と森林環境税も年金から特別徴収されます。住民税は前年所得をもとに計算されるため、退職直後は注意が必要です。退職後に収入が減っても、すぐ同じ割合で下がるとは限りません。
4.介護保険料
65歳以上になると、介護保険料は健康保険料とは別に計算されます。年額18万円以上の対象年金を受給している人は、原則として年金から特別徴収されます。保険料は全国一律ではなく、居住自治体と前年所得などによって変わります。
5.国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
退職後に国民健康保険へ加入すると、所得や世帯構成、自治体の保険料率などをもとに保険料が計算されます。65~74歳で一定の条件を満たす世帯では国民健康保険料が、75歳以降は後期高齢者医療保険料が、年金から差し引かれる場合があります。
| 年齢・働き方 | 主な医療保険 | 介護保険料 |
|---|---|---|
| 60~64歳で退職 | 国民健康保険など | 健康保険料に介護分を含む場合あり |
| 65~74歳 | 国保・勤務先の健康保険など | 原則として別に負担 |
| 75歳以上 | 後期高齢者医療制度 | 別に負担 |
年額18万円以上でも、すべてが天引きされるとは限らない
国民健康保険料の特別徴収には、世帯主や加入者の年齢、介護保険料との合計額など複数の条件があります。条件に該当しなければ、納付書や口座振替で支払う場合があります。年金から引かれていないからといって、保険料がかからないとは限りません。
年金月20万円の手取りはいくらになるのか
年金月20万円なら年間の額面は240万円ですが、手取りは一律に計算できません。ここでは通知書の読み方を理解するための仮例を置きます。
| 項目 | 2カ月分の仮の金額 |
|---|---|
| 年金支払額 | 400,000円 |
| 介護・医療保険料 | 20,000円 |
| 所得税等 | 5,000円 |
| 住民税等 | 10,000円 |
| 控除後振込額 | 365,000円 |
この場合、1カ月当たりの手取りは約18万2,500円です。これは制度上の標準額ではなく、「月20万円なら必ずこの手取りになる」という意味ではありません。
年金振込通知書で実際の手取りを確認する
年金を受給し始めた後は、日本年金機構から届く「年金振込通知書」で確認できます。
通知書で見る6項目
- 年金支払額:控除前の年金額
- 介護保険料額
- 国民健康保険料等
- 所得税額等
- 個人住民税額等
- 控除後振込額:実際に口座へ入る金額
通知書は通常、毎年6月に送付され、6月から翌年4月までの振込額が記載されます。年金額や振込額が変わった場合は、その都度通知されることもあります。
障害年金・遺族年金では税金の扱いが違う
老齢基礎年金や老齢厚生年金は原則課税対象です。一方、公的な障害年金や遺族年金は原則非課税です。ただし、非課税の年金でも、世帯全体の状況によって社会保険料などが発生する可能性はあります。
年金受給者も確定申告が必要になる場合がある
公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等以外の所得が20万円以下なら、確定申告不要制度の対象となる場合があります。ただし、医療費控除などの還付を受けるには申告が必要です。所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があります。
40代からの老後資金計画は3段階で試算する
将来の税金や保険料は正確に予測できません。そこで、年金見込額が月20万円なら、手取りを額面の90%=18万円、85%=17万円、80%=16万円の3段階で置いてみます。
| 手取り想定 | 生活費25万円との差 |
|---|---|
| 18万円(90%) | 月7万円 |
| 17万円(85%) | 月8万円 |
| 16万円(80%) | 月9万円 |
これは将来の手取りを予測した数字ではなく、税金や保険料が想定より多くても家計が成り立つかを確認するストレステストです。月1万円の差は25年間で300万円になります。
額面と手取りの差を見て、すぐ投資額を増やさない
手取りが少なくなる可能性を知っても、すぐNISAやiDeCoの積立額を増やす必要はありません。年金見込額、退職金・企業年金、預貯金、退職後の住居費、残る可能性がある負債、老後の収入を順に確認します。
私自身、数百万円単位の負債を返しています。将来への不安を理由に、今の生活費や返済額を削って投資へ回す考え方は取りません。まず家族の生活を守る。返済を続ける。そのうえで、長く続けられる範囲を将来へ分けます。
今日できること
ねんきんネットの見込額を確認し、「額面」「額面の90%」「額面の80%」の3つを書いてみてください。受給中の人は、年金振込通知書の「年金支払額」と「控除後振込額」を見比べます。
年金の額面は、老後資金を考える入口です。実際の生活を支えるのは、税金や保険料を差し引いた後に残るお金です。
あわせて確認したい年金の記事
本記事は2026年8月21日時点の日本年金機構、国税庁、厚生労働省および自治体の公表情報をもとに、公的年金から差し引かれる税金・社会保険料の一般的な仕組みをまとめたものです。税額や保険料は、年齢、所得、世帯構成、加入する医療保険、各種控除、居住自治体などによって異なります。掲載した手取り額は説明用の仮定であり、特定の受給者の金額を示すものではありません。


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