会社を退職すると、給与は止まります。しかし、健康保険料の支払いまで同時になくなるわけではありません。
退職後は、これまでの健康保険を任意継続するのか、国民健康保険へ加入するのか、家族の扶養に入るのかを自分で確認する必要があります。
私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、数百万円単位の負債を返しています。まだ退職したわけではありません。それでも、老後資金や働き方を考えるなら、退職後に発生する固定費も知っておく必要があります。
先に結論:制度名で決めず、3つの金額を比較する
すぐに再就職しない場合は、主に任意継続・国民健康保険・家族の扶養を比較します。
| 選択肢 | 保険料の決まり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職時の標準報酬月額など | 原則、全額自己負担 |
| 国民健康保険 | 前年所得・世帯人数・自治体など | 被用者保険のような扶養がない |
| 家族の扶養 | 原則、本人負担なし | 収入・生計維持などの条件がある |
「任意継続は高い」「国保の方が安い」と一律には決められません。任意継続の月額、住所地の国保試算額、家族の扶養へ入れるかを確認します。
退職後の健康保険を選ぶ順番
① すぐ再就職する
→加入要件を満たせば再就職先の健康保険
② すぐ再就職しない
→家族の扶養へ入れるか確認
③ 扶養へ入らない
→任意継続と国民健康保険の保険料を比較
再就職先の健康保険へ加入する
退職後すぐ別の会社へ就職し、社会保険の加入要件を満たす場合は、原則として再就職先の健康保険へ加入します。前職の退職日と新しい会社の入社日の間に空白期間がある場合は、その期間について別の健康保険が必要です。
退職前の健康保険を任意継続する
協会けんぽの場合、資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して2カ月以上あり、資格喪失日から20日以内に申出書を提出することが主な条件です。郵送では20日以内の到着が必要です。
加入期間は原則最長2年間ですが、再就職、75歳到達、保険料未納、本人の資格喪失申出、死亡などにより途中で終了します。本人の申し出でやめる場合、申出書が受理された月の翌月1日に資格を喪失します。
在職中と違って会社負担がなくなるため、保険料は全額本人負担です。ただし標準報酬月額には上限があり、給与明細の本人負担額の必ず2倍になるわけではありません。協会けんぽの2026年度の上限は32万円です。
出典:協会けんぽ「任意継続の加入条件」/令和8年度の標準報酬月額上限
住所地の国民健康保険へ加入する
任意継続を選ばず、家族の扶養にも入らない場合は、原則として住所地の国民健康保険へ加入します。国保の被保険者になったときは、原則14日以内に市区町村で手続きを行います。
国保には被用者保険のような扶養制度がありません。保険料は前年所得、加入者数、年齢、自治体の料率などで計算されるため、家族全員を含めて比較します。
退職後に収入が減っても、退職前年の給与が高ければ、最初の年度は保険料が高くなることがあります。倒産や解雇、雇い止めなどで特定受給資格者・特定理由離職者に該当する場合は、前年の給与所得を30%として計算する軽減制度の対象になることがあります。
出典:厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退」/横浜市「国民健康保険料の試算」
家族の健康保険の被扶養者になる
配偶者や家族が会社の健康保険へ加入している場合、被扶養者になれる可能性があります。認定されれば、原則として本人分の健康保険料は発生しません。
ただし、退職して無収入になれば自動的に入れるわけではありません。協会けんぽでは、60歳未満は年間収入130万円未満、60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満が原則的な基準です。同居の場合は、原則として被保険者の年間収入の2分の1未満であることなども確認されます。
失業給付や公的年金などが収入として扱われる場合もあります。税法上の扶養と健康保険上の扶養は別なので、家族の勤務先または健康保険組合へ確認します。
国保14日・任意継続20日の期限を忘れない
手続き期限のタイムライン
退職日
↓ 翌日に勤務先の健康保険資格を喪失
↓
原則14日以内:国民健康保険の届出
↓
20日以内:任意継続の申出書が到着
※必要書類や休日の扱いは、保険者・自治体へ確認してください。
任意継続は期限が短く、後からさかのぼって自由に選び直せない場合があります。退職前に比較を始めます。
任意継続と国保、どちらが安いのか
| 比較項目 | 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 |
|---|---|---|---|
| 本人の月額 | 保険者へ確認 | 自治体で試算 | 原則0円 |
| 家族を含む額 | 扶養認定を確認 | 加入者全員で計算 | 認定条件を確認 |
| 期間 | 最長2年 | 条件を満たす間 | 認定中 |
| 期限 | 20日以内 | 原則14日以内 | 勤務先へ確認 |
月額だけでなく「月額保険料×加入予定月数」で比較します。再就職予定があるなら、実際に加入する期間で計算します。
保険料以外にも確認したいこと
健康保険組合独自の付加給付、健診補助、高額療養費、扶養認定なども確認します。保険料が少し安くても、利用していた給付がなくなる場合があります。
傷病手当金や出産手当金は、任意継続へ加入しただけで新たに受け取れるものではありません。一方、退職日まで継続して1年以上被保険者で、退職日時点で受給しているか受給条件を満たす場合は、資格喪失後の継続給付の対象になることがあります。
定年退職後の資金計画へどう入れるか
生活費+健康保険料+介護保険料+住民税+住居費-年金・給与などの手取り収入=毎月の不足額
特に注意したいのは退職直後の1~2年です。前年給与をもとに住民税や国保料が計算される一方、給与収入はすでに減っている可能性があります。退職金を住宅購入や投資へ回す前に、税金・社会保険料として残す金額を確認します。
負担額を見て、すぐ任意継続を決めない
手続きが分かりやすいことと、負担が小さいことは別です。「国保は高いらしい」という印象だけで任意継続を選ぶ必要もありません。
私は数百万円単位の負債を返しています。固定費が月1万円違えば、1年間で12万円です。だからこそ、イメージではなく数字を確認したいと思っています。
ただし、最も安い制度を探すために、必要な医療まで我慢するわけではありません。家族の生活を守り、必要な医療を受けられる状態を保ったうえで、不要な負担を減らします。
退職前に確認したい7項目
- 再就職まで空白期間があるか
- 任意継続できるか
- 任意継続の月額
- 国保の試算額
- 家族の扶養へ入れるか
- 一緒に切り替える家族がいるか
- 国保14日・任意継続20日の期限
今日できること
給与明細や健康保険組合のページを開き、「現在の健康保険料」「保険者の名前」「任意継続の問い合わせ先」を確認します。その後、自治体のホームページで「国民健康保険料 試算」と検索してください。
退職後の健康保険は、退職してから突然始まる話ではありません。働いている今のうちに、選択肢と期限を一度だけ確認しておく。それだけでも、退職後のお金に対する輪郭は少しはっきりしてきます。
あわせて確認したい記事
本記事は2026年8月22日時点の厚生労働省、全国健康保険協会および自治体等の公表情報をもとに、退職後の健康保険について一般的な内容をまとめたものです。保険料、加入条件、扶養認定、必要書類、給付内容は、加入していた健康保険、居住自治体、年齢、所得、世帯構成、退職理由などによって異なります。実際の選択にあたっては、勤務先、健康保険組合、協会けんぽ、住所地の自治体へ最新情報をご確認ください。


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