働きながら年金をもらうと減る?在職老齢年金を3例で計算【2026年度】

働きながら老齢年金を受け取ると、「収入があるほど年金が減る」と聞くことがあります。

ただ、給与を受け取っている人の年金が、すべて一律に減るわけではありません。

2026年4月からは、在職老齢年金の基準額が月51万円から65万円へ引き上げられました。これまで支給停止の対象だった人でも、年金を全額受け取れる場合があります。

私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、数百万円単位の負債を返しています。

まだ年金を受け取りながら働いた経験はありません。この記事は体験談ではなく、将来の働き方と資金計画を考えるために、公式情報を調べて整理したものです。

先に結論:2026年4月から「合計65万円」が基準

在職老齢年金では、次の二つを合計します。

  • 基本月額:加給年金額を除く老齢厚生年金の年額÷12
  • 総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額÷12

合計が65万円以下なら、老齢厚生年金は原則として全額支給されます。65万円を超えると、超過額の2分の1が支給停止されます。

支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2

なお、老齢基礎年金は在職老齢年金の調整対象ではありません。

出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

在職老齢年金とは

在職老齢年金は、老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働く人について、賃金と年金額に応じて老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する仕組みです。

「働いている人の年金を一律にカットする制度」ではありません。基準を超えた部分の半分が止まる仕組みです。

対象になるのは主に老齢厚生年金です。老齢基礎年金に加えて、企業年金や個人年金なども、この計算式へそのまま足すものではありません。

2026年4月に51万円から65万円へ変更

2026年3月までの基準額は月51万円でした。2026年4月からは月65万円へ引き上げられています。

期間 支給停止の基準額
2026年3月まで 51万円
2026年4月から 65万円

日本年金機構は、平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けたい高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みにすることを見直しの趣旨と説明しています。

出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」

「62万円」と「65万円」の情報があるのはなぜか

検索すると、改正後の基準額を「62万円」と説明する資料も見つかります。

62万円は、法律が成立した2025年6月時点の額です。その後の賃金変動を反映し、実際に2026年4月から適用された基準額は65万円となりました。

51万円(改正前)→62万円(法律成立時の表示)→65万円(2026年4月の施行額)

2026年度の計算をするときは、65万円を使います。

出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

基本月額と総報酬月額相当額の見方

基本月額

基本月額は、加給年金額を除いた老齢厚生年金の年額を12で割った金額です。老齢基礎年金は含めません。

例えば、老齢厚生年金が年120万円なら、基本月額は10万円です。

120万円÷12カ月=10万円

総報酬月額相当額

総報酬月額相当額は、毎月の給与そのものではなく、標準報酬月額と、直近1年間の標準賞与額を12で割った金額の合計です。

賞与がある人は、月給だけで基準を下回っていても、計算結果が変わる場合があります。

標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額÷12=総報酬月額相当額

3つの例で支給停止額を計算

以下は仕組みを理解するための仮定です。いずれも、老齢厚生年金の基本月額を10万円、調整対象外の老齢基礎年金を月12万円として計算します。

例1:総報酬月額相当額が37万5,000円

基本月額10万円と合わせると47万5,000円です。65万円以下なので、支給停止はありません。

10万円+37万5,000円=47万5,000円

老齢厚生年金10万円と老齢基礎年金12万円を合わせ、年金月額は22万円です。

例2:基本月額と賃金の合計が68万円

総報酬月額相当額を58万円とすると、基本月額10万円との合計は68万円です。

(10万円+58万円-65万円)÷2=1万5,000円

老齢厚生年金は10万円から1万5,000円を差し引いた8万5,000円。老齢基礎年金12万円は減らないため、年金の受取額は合計20万5,000円です。

例3:総報酬月額相当額が70万円

基本月額10万円との合計は80万円です。

(10万円+70万円-65万円)÷2=7万5,000円

老齢厚生年金は2万5,000円となり、老齢基礎年金12万円を合わせた年金受取額は14万5,000円です。

基本月額+賃金 支給停止額 年金受取額
1 47.5万円 0円 22万円
2 68万円 1.5万円 20.5万円
3 80万円 7.5万円 14.5万円

税金や社会保険料を差し引く前の単純な例です。実際の手取り額ではありません。

支給停止された部分は、あとで戻るとは限らない

在職老齢年金で支給停止された老齢厚生年金は、退職後にまとめて返ってくる仕組みではありません。

また、繰下げ受給を選んだ場合でも、在職老齢年金によって支給停止となる部分は、原則として繰下げ増額の対象になりません。

「今は働いているから年金を受け取らず、後から全額を増やせる」と単純には考えない方が安全です。働き方や請求時期を検討するときは、年金事務所やねんきんネットで個別に確認します。

年金を減らさないことだけを目標にしない

基準額を超えると知ると、勤務時間を減らした方が得に見えるかもしれません。

しかし、比べるのは年金の支給停止額だけではありません。

  • 給与と賞与
  • 厚生年金へ加入し続けることで増える将来の年金
  • 健康保険や税金の負担
  • 会社の福利厚生
  • 仕事のやりがいと健康状態
  • 家族の生活費と負債返済

私自身、数百万円単位の負債を返しています。支給停止を避けるためだけに収入を減らし、今の家計や返済を苦しくする判断は取りません。

在職老齢年金は、働くか辞めるかを決める制度ではありません。自分が選んだ働き方の中で、年金がどう調整されるかを確認する仕組みです。

今日できること

今日は、正確な支給停止額まで計算できなくても構いません。次の5項目だけメモしてください。

  1. 老齢厚生年金の見込年額
  2. 年額を12で割った基本月額
  3. 標準報酬月額の目安
  4. 直近1年間の賞与額÷12
  5. 基本月額と総報酬月額相当額の合計

合計が65万円を超えそうなら、ねんきんネットの試算や年金事務所で確認します。

「働くと年金が全部なくなる」と不安になる前に、まず自分の数字を式へ当てはめる。それが最初の一歩です。


本記事は2026年8月25日時点で確認できる日本年金機構および厚生労働省の公表情報をもとに、在職老齢年金の一般的な仕組みをまとめたものです。実際の支給停止額は、年齢、年金額、標準報酬月額、標準賞与額、加入状況などによって異なります。掲載した計算例は制度を説明するための仮定であり、特定の受給者の金額を示すものではありません。正確な金額は、ねんきんネットまたは年金事務所でご確認ください。

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