企業型DCのマッチング拠出とは?2026年の上限撤廃とiDeCoとの違い

NISA・資産形成

勤務先の福利厚生や企業型確定拠出年金のサイトに、「マッチング拠出」という言葉が表示されることがあります。

会社が毎月出している掛金へ、自分のお金を上乗せできる制度です。本人が出した掛金は所得控除の対象になるため、老後資金を準備しながら所得税・住民税の負担を軽くできる可能性があります。

一方、すべての企業型DC加入者が利用できるわけではありません。勤務先がマッチング拠出を制度として導入し、企業型DC規約へ定めている必要があります。また、マッチング拠出を選ぶと、原則としてiDeCoとの同時利用はできません。

私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、お金について学び直しています。

同時に、数百万円単位の負債を返しながら、家族の生活と老後資金づくりを両立しようとしている途中でもあります。

所得控除がある制度でも、掛金を増やして現在の家計が赤字になれば、無理なく続けられる資産形成とはいえません。この記事では、マッチング拠出の仕組み、2026年の改正、iDeCoとの違い、掛金を決める前の確認事項を整理します。

先に結論:上限が広がっても会社の制度確認が先

2026年4月1日、マッチング拠出に関する一つの制限が撤廃されました。改正前は、本人が出す掛金について「会社の事業主掛金以下」「会社掛金と本人掛金の合計が制度上の拠出限度額以内」という二つの条件を満たす必要がありました。

改正後は、本人掛金を「会社掛金以下」とする制限がなくなりました。2026年11月までは、原則として次の範囲で本人掛金を決められます。

会社の事業主掛金
+本人のマッチング拠出
+DB等の他制度掛金相当額
≦月5万5,000円

さらに、2026年12月1日からは、企業型DCを含む共通の拠出限度額が原則月6万2,000円へ引き上げられる予定です。

ただし、法令上の制限が変わっても、自分の会社で直ちに希望額を拠出できるとは限りません。勤務先が制度を導入しているか、会社の掛金はいくらか、申込時期・掛金単位・社内上限はいくらかを確認します。

出典:厚生労働省「2025年の制度改正」

企業型DCのマッチング拠出とは

企業型DCでは、勤務先が従業員ごとの掛金を拠出し、加入者自身が用意された運用商品から選んで老後資金を運用します。

マッチング拠出を導入している企業では、会社の掛金に加えて、従業員が自分の給与から掛金を上乗せできます。

会社の事業主掛金
+従業員本人の加入者掛金
=企業型DCで運用する毎月の掛金

例えば、会社掛金が月1万円で、本人が月1万円を上乗せすれば、毎月合計2万円を企業型DCで運用します。本人掛金は強制ではありません。制度上認められた範囲で、利用するかどうかと金額を加入者が決めます。

なお、マッチング拠出は会社が給与とは別に掛金を追加してくれる制度ではありません。本人掛金は、自分の給与から負担するお金です。

出典:iDeCo公式サイト「用語集」

2026年4月に「会社掛金以下」の制限が撤廃

改正前は、本人掛金を会社掛金より多くできませんでした。会社掛金が少ない人ほど、制度全体の上限まで余裕があっても本人掛金を増やしにくい仕組みだったのです。

改正前の例

会社掛金が月5,000円で、ほかの企業年金がない場合、改正前の本人掛金は原則として最大月5,000円でした。会社掛金と合わせても月1万円です。

会社掛金5,000円
+本人掛金5,000円
=合計1万円

2026年4月以降の例

2026年4月1日以降は、「本人掛金は会社掛金以下」という制限が撤廃されました。ほかの企業年金がない単純な例なら、本人掛金の制度上の余地は次のとおりです。

月5万5,000円
-会社掛金5,000円
=本人掛金の制度上の上限5万円

また、2026年4月1日から11月30日までの間に初めて事業主掛金を超える本人掛金を拠出する場合は、掛金変更回数に関する経過措置があります。この期間限定の取扱いは2026年11月30日までです。

通常の変更回数との関係や受付期限は勤務先によって異なるため、利用を検討している人は社内の案内を早めに確認してください。

なお、以上は法令上の限度額を単純化した例です。勤務先の規約や運用方法により、実際に選べる掛金額、変更時期、申込方法は異なります。

現在のマッチング拠出上限

勤務先の制度企業型DCの原則的な月額上限
DB等の他制度がない月5万5,000円
DB等の他制度がある5万5,000円から他制度掛金相当額を控除

2026年11月までの本人掛金の上限を考える基本式は、次のとおりです。

本人掛金の上限
=月5万5,000円
-会社の事業主掛金
-DB等の他制度掛金相当額

会社掛金が月1万円で、ほかの企業年金がなければ、制度上の本人掛金は最大月4万5,000円です。

会社掛金が月2万円、DB等掛金相当額が月1万円なら、制度上の本人掛金は最大月2万5,000円です。

DB等の他制度掛金相当額は、従業員が給与から直接支払っている金額とは限りません。制度に基づいて算定されるため、人事部や企業年金の加入者サイトで確認します。

2026年12月には企業型DC全体の上限も変わる

2026年4月の変更は、本人掛金を会社掛金以下とする制限の撤廃です。これとは別に、2026年12月1日から企業型DCの拠出限度額自体が引き上げられる予定です。

時期共通限度額の基本
2026年11月まで月5万5,000円
2026年12月以降月6万2,000円
会社の事業主掛金
+本人のマッチング拠出
+DB等の他制度掛金相当額
≦月6万2,000円

例えば、会社掛金が月1万5,000円、DB等掛金相当額が月1万円なら、残る枠は月3万7,000円です。

ただし、上限が引き上げられても、勤務先の規約やシステムが同じ時期に変更されるとは限りません。掛金が自動的に増えるわけでもないため、勤務先からの案内を確認します。

出典:厚生労働省「企業型DCの拠出限度額が5.5万円から6.2万円に引き上げられます」

自分の会社掛金はどこで確認するか

会社が毎月いくら拠出しているか分からなければ、本人掛金の上限も計算できません。主な確認場所は、企業型DCの加入者専用サイト、残高通知、給与明細、社内ポータル、制度説明書、人事・福利厚生担当からの案内です。

  • 事業主掛金
  • 会社掛金・会社拠出額
  • 企業型年金加入者掛金
  • 加入者掛金・マッチング拠出
  • 他制度掛金相当額

「会社掛金」と「本人掛金」を混同しないようにします。給与明細に企業型DC関連の金額が表示されていても、会社負担か本人負担かを確認してください。

本人掛金は所得控除の対象

マッチング拠出で本人が支払った掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。

例えば、本人掛金が月2万円なら、年間掛金は24万円です。仮に所得税と住民税を合わせた負担率を20%と単純に置くと、税負担軽減の概算は年4万8,000円になります。

月2万円×12カ月=年24万円
年24万円×20%=年4万8,000円

実際の軽減額は課税所得、所得税率、住民税、ほかの所得控除、拠出月数などで変わります。24万円がそのまま税金として戻るのではありません。自分のお金24万円を老後資金へ移し、その結果として課税所得が24万円少なくなる仕組みです。

マッチング拠出とiDeCoは同時利用できない

企業型DCのマッチング拠出を選択している人は、原則としてiDeCoへ同時に掛金を拠出できません。どちらか一方を選ぶ関係です。

すでにiDeCoへ加入している人がマッチング拠出へ切り替える場合は、iDeCo側の資格喪失手続きなどが必要になることがあります。反対に、マッチング拠出をやめてiDeCoを選ぶ場合も手続きが必要です。

掛金を止めただけで自動的にもう一方の制度が始まるわけではありません。切替え前に、開始・停止時期、必要な届出、保有資産の扱い、掛金が空白になる期間、再変更できる時期を確認します。

出典:iDeCo公式サイト「iDeCoの加入手続き」

マッチング拠出とiDeCoの違い

比較項目マッチング拠出iDeCo
利用条件勤務先が制度を導入本人が加入要件を満たす
手続き窓口原則として勤務先自分で選んだ運営管理機関
運用商品勤務先の企業型DC商品iDeCo運営管理機関の商品
本人掛金所得控除の対象所得控除の対象
運営管理機関原則として会社が選定本人が選択
同時利用iDeCoとは原則併用不可マッチング拠出とは原則併用不可
引出し原則として老後まで不可原則として老後まで不可

どちらかが常に有利とは限りません。選べる商品、信託報酬、口座管理費用、本人が実際に拠出できる上限、手続きや管理のしやすさを比較します。

掛金は原則として途中で引き出せない

マッチング拠出で積み立てた資産は、本人が支払ったお金であっても、普通預金のように必要なとき自由に引き出せません。

  • 当面の生活費
  • 病気やけがへの予備資金
  • 教育費
  • 住宅購入・修繕費
  • 車の買替え
  • 税金・社会保険料
  • 負債返済
  • 近い時期の介護費用

こうした支出に使う可能性があるお金は別に確保します。「拠出できる金額」と「老後まで使わずに済む金額」は別です。

運用商品と手数料も確認する

マッチング拠出を始めるときは、掛金額だけでなく、追加分がどの商品へ配分されるか確認します。現在の掛金配分が追加分にも適用される場合があるためです。

  • 選択している商品
  • 株式・債券・預金などの割合
  • 投資対象の国や地域
  • 元本保証の有無
  • 信託報酬
  • 指定運用方法のままになっていないか

掛金の所得控除があっても、選んだ商品には元本割れの可能性があります。元本確保型商品でも、物価上昇に資産の増加が追いつかない可能性があります。

負債返済中に利用する場合の考え方

負債がある場合は、マッチング拠出の節税効果だけでなく、借入金利と毎月の収支を確認します。

マッチング拠出:月2万円
借入残高:300万円
借入金利:年5.5%
拠出後の家計:月1万円の赤字

本人掛金は所得控除の対象ですが、運用成果は確定していません。一方、借入利息は契約に基づいて発生します。拠出による生活費不足をカードローンやリボ払いで補えば、老後資金を積み立てながら現在の負債を増やす状態になります。

私自身も、数百万円単位の負債を返している途中です。会社の制度に税制上の利点があっても、すぐ上限まで使うつもりはありません。

  1. 家族の生活費を確保する
  2. 契約上の返済を続ける
  3. 新たな借入れを防ぐ予備資金を持つ
  4. 借入残高と金利を確認する
  5. 数年以内に使うお金を分ける
  6. 老後まで使わない余剰資金から掛金を決める

加入前に確認したい7項目

  1. 勤務先が導入しているか:企業型DCがあってもマッチング拠出がない会社があります。
  2. 会社の事業主掛金はいくらか:本人掛金の上限計算に必要です。
  3. DB等の他制度掛金相当額はいくらか:企業型DCで使える枠へ影響します。
  4. 本人掛金の社内上限はいくらか:法令上の上限と一致しない場合があります。
  5. 申込み・掛金変更はいつできるか:経過措置は2026年11月30日までです。
  6. どの商品へ配分されるか:増額後の買付商品と割合を確認します。
  7. iDeCoとどちらを選ぶか:上限、商品、手数料、管理方法を比較します。

ファイナンシャルプランへの組み込み方

案内容
利用しない現在の家計と負債返済を優先
少額利用家計黒字の一部を給与天引き
上限を検討予備資金と近く使うお金を確保したうえで判断

上限まで積み立てられるかではなく、掛金を増やした後も毎月の現金収支が黒字になるかを確認します。

今日できること

今日は、マッチング拠出へ申し込む必要はありません。勤務先の社内ポータルまたは企業型DCの加入者サイトで、「マッチング拠出」と検索してください。

マッチング拠出:利用可・利用不可・不明
会社の事業主掛金:
DB等の他制度掛金相当額:
本人掛金の上限:
次回の申込・変更期限:

続いて、毎月の家計黒字額、すぐ使える預金、借入残高と金利を確認します。

上限まで積み立てられるかではなく、老後まで引き出せなくても家族の生活と返済を維持できるかを考える。それが、2026年の制度改正を自分の家計へ取り入れる第一歩です。


参照した公式情報

本記事は2026年9月12日時点で確認できる厚生労働省およびiDeCo公式サイトの公表情報をもとに、企業型DCのマッチング拠出に関する一般的な仕組みをまとめたものです。実際の利用可否、事業主掛金、本人掛金の上限、DB等の他制度掛金相当額、申込時期、掛金変更方法および取扱商品は、勤務先の企業型DC規約によって異なります。2026年12月以降の制度対応時期も勤務先により異なる可能性があります。企業型DCの商品には元本割れの可能性があり、積み立てた資産は原則として老後まで引き出せません。マッチング拠出とiDeCoの切替えを行う場合は、勤務先と運営管理機関へ必要な手続きをご確認ください。本記事は特定の商品、掛金額または運用方法を推奨するものではありません。

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