NISAを売却すると非課税枠はいつ復活?取得価額で考える3つの例

NISAを売却した後の非課税枠再利用を、購入100万円・売却150万円・翌年100万円分で示した図 NISA・資産形成

NISAは、途中で売ると損なのだろうか。

売却した枠は戻らないのか。
利益が出たら、その金額まで枠が増えるのか。
売却したお金で、すぐに別の商品を買い直せるのか。

制度を調べていると、「売却後に枠を再利用できる」という説明を目にします。

しかし、ここには二つの異なる枠が登場します。

  • 1年間に投資できる「年間投資枠」
  • NISAで保有できる「非課税保有限度額」

この二つを同じものとして読むと、売却後の扱いが分かりにくくなります。

私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得した現在も、数百万円単位の負債を返しながら、お金について学び続けています。

使えるお金に限りがあると、NISAから資金を取り崩す場面も、遠い話ではありません。

この記事では、NISAの商品を売却したとき、非課税枠がいつ、いくら復活するのかを3つの例で整理します。

先に結論:復活するのは翌年以降、金額は取得価額

NISAの商品を売却したときの要点は、次の5つです。

  1. 売却によって再利用できるのは、非課税保有限度額
  2. 枠を再利用できるのは、売却した年ではなく翌年以降
  3. 復活する金額は、売却額ではなく取得価額
  4. 年間投資枠の上限は、売却しても増えない
  5. 売却損が出ても、特定口座などの利益とは損益通算できない

金融庁は、NISAの商品を売却した場合、翌年以降に売却商品の簿価、つまり取得金額の分だけ非課税保有限度額を再利用できると説明しています。金融庁「NISAを知る」

例えば、100万円で購入した商品を150万円で売却しても、翌年以降に復活するのは150万円ではなく100万円です。反対に、100万円で購入した商品を70万円で売却した場合も、復活する枠は原則として取得価額の100万円です。

売却後に再利用できる枠の考え方
購入
100万円
売却
150万円
翌年以降
100万円分

利益50万円を含む150万円ではなく、取得価額100万円分を再利用します。

NISAには二つの上限がある

2026年8月9日時点で、18歳以上が利用するNISAの年間投資枠は次のとおりです。

区分 年間投資枠
つみたて投資枠 120万円
成長投資枠 240万円
合計 360万円

一方、NISA口座で保有できる非課税保有限度額は合計1,800万円です。このうち、成長投資枠で保有できる上限は1,200万円です。

区分 非課税保有限度額
NISA全体 1,800万円
うち成長投資枠 1,200万円
年間投資枠

1年間に新しく購入できる上限
つみたて120万円+成長240万円

売却しても同じ年には復活しません。

非課税保有限度額

NISAで保有できる取得価額の上限
合計1,800万円

売却した取得価額分を翌年以降に再利用できます。

売却によって翌年以降に空きが生じるのは、後者の非課税保有限度額です。

なお、2023年までの旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)で保有していた商品を売却しても、新NISAの非課税保有限度額1,800万円は増えません。旧NISAと新NISAは別枠で管理されています。

売却した年に年間投資枠は戻らない

例えば、年初に成長投資枠で240万円分の商品を購入し、同じ年にすべて売却したとします。売却代金が手元に戻っても、その年の成長投資枠240万円を再び使えるわけではありません。

日本証券業協会も、売却で減少した非課税保有額は、翌年以降、年間投資枠の範囲内で新しい投資に利用できると説明しています。日本証券業協会「NISAのよくある質問」

今年使った年間投資枠
→ 売却しても今年中には戻らない

売却した商品の取得価額
→ 翌年以降、非課税保有限度額として再利用できる

その年にまだ使っていない別の年間投資枠が残っていれば、その残額の範囲で購入できる場合があります。「売却したから枠が戻った」のではなく、「もともと未使用だった年間投資枠を使った」ということです。

例1:100万円で買い、150万円で売却した場合

項目 金額
取得価額 100万円
売却額 150万円
利益 50万円
翌年以降に復活する枠 100万円

NISAでは、一定の条件のもと、売却益50万円には税金がかかりません。しかし、非課税枠が150万円分復活するわけではありません。

非課税保有限度額は時価ではなく、買付額である簿価をもとに管理されます。値上がりした50万円分まで非課税枠が広がる制度ではありません。

例2:100万円で買い、70万円で売却した場合

項目 金額
取得価額 100万円
売却額 70万円
損失 30万円
翌年以降に復活する枠 100万円

売却して手元へ戻るのは70万円ですが、翌年以降に再利用できる非課税保有限度額は、原則として取得価額の100万円分です。

ただし、「枠が100万円戻るから損はない」とは考えられません。30万円の経済的な損失は残っています。

NISA口座で生じた売却損は税務上なかったものと扱われるため、特定口座や一般口座で生じた利益との損益通算や、損失の繰越控除はできません。国税庁「新NISAの概要」

例3:一部だけ売却した場合

商品は、すべて売らずに一部だけ売却することもできます。この場合、翌年以降に再利用できるのは、売却した部分に対応する取得価額です。売却して受け取った金額そのものではありません。

確認する数字 意味
売却代金 実際に受け取る金額
売却した部分の取得価額 翌年以降に再利用できる枠の基準
売却損益 売却代金と取得価額との差

投資信託を複数回に分けて購入している場合、取得価額の計算を自分で正確に行うのは簡単ではありません。証券会社の取引画面や取引報告書で、「取得価額」「平均取得価額」「簿価」などの表示を確認します。

枠が復活しても、一度に全額を使えるとは限らない

例えば、非課税保有限度額1,800万円をすべて利用した後、取得価額600万円分の商品を売却したとします。翌年以降、非課税保有限度額には600万円分の空きが生じます。

しかし、翌年に600万円を一度に投資できるわけではありません。1年間に利用できる上限は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計360万円です。

600万円分の空きを再び埋めるには、年間投資枠の範囲内で複数年に分けて購入する必要があります。

使わなかった年間投資枠は翌年へ繰り越せない

例えば、つみたて投資枠の年間上限120万円のうち、ある年に30万円しか投資しなかったとします。残り90万円を翌年へ足して、翌年に210万円分を使うことはできません。

状況 翌年の扱い
商品を売却した 取得価額分の非課税保有限度額を再利用できる
年間投資枠を使い残した 未使用分は繰り越せない
値上がりした商品を売った 利益分まで枠が増えるわけではない
値下がりした商品を売った 取得価額分は復活するが、損失は残る

売却して買い直す前に確認したい4つのこと

1.売却する目的

生活費や教育費に使うのか、退職後の生活費として取り崩すのか、投資対象やリスクを見直すのか。まず「なぜ売るのか」を一文で書いてみます。

2.売却後の資金の使い道

売却代金を生活費へ充てるのか、現金として保管するのか、翌年以降に再投資するのかを整理します。

3.売却損が出ていないか

NISAの売却損は、特定口座などの利益と損益通算できません。含み損があるから絶対に売ってはいけないという意味ではありませんが、税務上の損失として利用できないことは知っておきたいところです。

4.積立設定が残っていないか

保有商品を売却しても、同じ商品の積立設定が自動的に停止されるとは限りません。商品を整理するために売却するなら、積立設定も確認します。

老後資金でも「売らないこと」が目的ではない

NISAは長期の資産形成に使われる制度です。そのため、途中で売却すると失敗したように感じることがあります。

しかし、老後資金は最後まで画面の中へ残すためのお金ではありません。将来の生活で使うためのお金です。

金融庁も、NISAの活用例として、積立投資の途中で必要な資金を取り崩し、その後も積立を続けるパターンを紹介しています。金融庁「NISAの活用事例」

一方で、「枠が翌年に戻るから」という理由だけで、短期間に売買を繰り返す必要もありません。

負債がある私にとっての売却判断

私には、返済中の数百万円単位の負債があります。

家族の生活に必要な現金が不足する。返済に支障が出る。急な支出へ対応できない。そうした状況なら、投資資産を守ることより、生活を守ることを先に考える必要があります。

ただし、相場が少し下がっただけで反射的に売ることと、家計上の必要性から計画的に取り崩すことは分けて考えたいところです。

売却前に確認する順番
売却する目的

家計に必要な金額

売却後の資金用途

残る資産と積立設定

翌年以降に再利用できる枠

非課税枠の仕組みを知ることは、「売るべき時期」を当てるためではありません。必要になったとき、制度への誤解で判断を止めないための準備です。

今日できること

今日は商品を売却しなくても構いません。利用している証券会社のNISA画面を開き、次の4項目を探してみてください。

  • 今年使用したつみたて投資枠
  • 今年使用した成長投資枠
  • NISA全体の非課税保有額
  • 保有商品の取得価額

売却する予定がなくても、自分がどの枠をどの程度使っているかを確認する。その数字が読めるようになるだけで、NISAは少し、自分で扱える制度に変わります。

参照した一次情報

注意書き
本記事は、2026年8月9日時点で確認できる金融庁、国税庁、日本証券業協会の公表情報をもとに、NISA商品の売却と非課税保有限度額の再利用について一般的な仕組みをまとめたものです。個別商品の売却や買い替えを推奨するものではありません。実際の取得価額、利用済み投資枠、売却後の表示時期などは取引状況や金融機関によって異なる場合があります。売却前に利用する金融機関の画面、取引報告書および最新の公式情報をご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました