退職金とiDeCoは同じ年に受け取ると損?一時金・年金の選び方【2026年版】

退職金とiDeCoの受取時期と一時金・年金の選択を示すタイムライン 年金・老後資金

「会社の退職金とiDeCoは、両方とも退職所得控除を使える」

このように聞くと、それぞれに控除が用意され、税金をほとんどかけずに受け取れるように思えるかもしれません。

しかし、同じ勤続期間やiDeCoの加入期間をもとに、退職所得控除を二重に使えるとは限りません。

会社の退職金とiDeCo一時金を同じ年や近い年に受け取ると、重複する期間を除いて退職所得控除を計算する場合があります。

さらに、2026年1月以後にiDeCoなどの確定拠出年金を一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る場合は、税制上の確認期間が従来より長くなりました。

私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在もお金について学び続けています。

同時に、数百万円単位の負債を返しながら、家族の生活と将来の資金づくりを両立しようとしている途中でもあります。

退職金やiDeCoは、まだ先の話に見えます。しかし、受取時期は定年直前だけで決めればよいとは限りません。退職年齢、再雇用、住宅費、負債残高、公的年金の開始時期と一緒に考える必要があります。

この記事では、退職金とiDeCoの受け取り方、2026年からの税制、ファイナンシャルプランへの組み込み方を整理します。

先に結論:受取額だけでなく順番と間隔を確認する

退職金とiDeCoの受取方法を決めるときは、次の4点を確認します。

  • 勤務先の退職金を受け取る年齢
  • iDeCoを一時金と年金のどちらで受け取るか
  • 一時金を受け取る順番
  • それぞれの受取時期が何年離れているか

特に注意したいのが、退職金とiDeCoをともに一時金で受け取る場合です。

受け取る順番 主な確認点
iDeCo一時金→会社の退職金 2026年以後は、前年以前9年以内のiDeCo一時金が調整対象になる場合がある
会社の退職金→iDeCo一時金 前年以前19年以内の退職金が調整対象になる場合がある
同じ年に両方受け取る 複数の退職手当等を合算して控除・税額を計算する
iDeCoを年金で受け取る 退職所得ではなく、公的年金等に係る雑所得として扱われる

一般に「10年ルール」「20年ルール」と呼ばれますが、これは単に10年、20年待てば必ず有利になるという意味ではありません。

税額は、勤続年数、iDeCoの掛金拠出期間、受取額、期間の重複、ほかの退職一時金の有無によって変わります。

出典:国税庁「退職手当等に対する源泉徴収」

iDeCoの受け取り方は3種類ある

受取方法 税制上の主な扱い
一時金 退職所得・退職所得控除
年金 公的年金等に係る雑所得・公的年金等控除
一時金と年金の併用 受取部分ごとに扱いが分かれる

iDeCoは原則として60歳から受け取れます。

ただし、60歳時点で確定拠出年金の通算加入者等期間が10年未満の場合は、受給可能年齢が61歳から65歳まで段階的に遅くなります。

受給開始時期は、原則として受給可能年齢から75歳までの間で選択できます。

年金として受け取る場合は、原則として5年以上20年以下の有期年金です。運営管理機関によっては終身年金や、一時金と年金の併用を選べる場合もあります。

すべての金融機関で同じ選択肢が用意されているわけではないため、自分が利用している運営管理機関の給付条件を確認します。

出典:iDeCo公式サイト「給付について」

iDeCoを一時金で受け取る場合の税金

iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取ると、税制上は退職所得として扱われます。

(受取額-退職所得控除額)×1/2=課税退職所得

退職所得控除額の基本的な計算式は次のとおりです。

勤続年数・加入期間 退職所得控除額
20年以下 40万円×年数(最低80万円)
20年超 800万円+70万円×(年数-20年)

iDeCoでは、会社の勤続年数ではなく、原則として加入者として掛金を拠出した月数をもとに控除対象期間を計算します。

例えば、掛金を拠出した期間が15年で、ほかの退職金との調整がないと仮定すると、退職所得控除額は600万円です。

40万円×15年=600万円

iDeCo一時金が500万円なら、この単純なケースでは退職所得控除額の範囲内に収まります。

ただし、勤務先の退職金や企業型DCなどを近い時期に受け取る場合、600万円の控除をそのまま使えるとは限りません。

出典:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」iDeCo公式サイト「よくあるご質問」

同じ年に退職金とiDeCo一時金を受け取る場合

会社の退職金とiDeCo一時金を同じ年に受け取る場合は、それぞれを完全に別の退職所得として計算するわけではありません。

その年中に受け取った退職手当等を含めて、退職所得控除額と源泉徴収税額を計算します。

後から退職金等を支払う側へ提出する「退職所得の受給に関する申告書」には、先に受け取った退職金等の情報を記入し、原則として退職所得の源泉徴収票を添付します。

同じ会社を退職する際にも、支払元が次のように分かれることがあります。

  • 勤務先からの退職一時金
  • 確定給付企業年金からの一時金
  • 企業型DCの一時金
  • iDeCoの一時金

支払元が違っても、税制上はいずれも退職手当等に該当する場合があります。「振込先が別だから、それぞれで控除を満額使える」とは限りません。

出典:国税庁「同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」

2026年から「5年ルール」が「10年ルール」へ

2025年までは、確定拠出年金の一時金を先に受け取り、その後に会社の退職金を受け取るケースについて、一般に「5年ルール」と呼ばれる考え方がありました。

2026年1月1日以後にiDeCoや企業型DCの老齢一時金を受け取る場合は、この確認期間が延長されています。

会社の退職金を受け取る年の前年以前9年以内に、確定拠出年金の一時金を受け取っていると、重複する期間を除いて退職所得控除を計算する場合があります。これが一般に「10年ルール」と呼ばれる改正です。

例えば、2026年にiDeCo一時金を受け取り、2035年までに会社の退職金を受け取る場合は、調整の対象となる可能性があります。

一方、年数だけで機械的に判断するのは危険です。実際の計算では、各一時金に対応する期間が重なっているか、先に受け取った金額が退職所得控除額に満たなかったかなども関係します。

「iDeCoを60歳、退職金を65歳で受け取れば、それぞれの控除を満額使える」という従来の説明は、2026年以降の受給では当てはまらない可能性があります。

出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱」国税庁「退職手当等に対する源泉徴収」

会社の退職金を先に受け取る場合は「20年ルール」

順番が逆の場合は、確認する期間も異なります。

会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoなどの確定拠出年金を一時金で受け取る場合、前年以前19年以内に受け取った退職金が調整対象になることがあります。

一般に「20年ルール」と呼ばれる仕組みです。

例えば、60歳で会社の退職金を受け取り、65歳でiDeCo一時金を受け取る場合、5年間空けても調整対象になる可能性があります。

順番 確認される主な期間
iDeCo一時金→会社の退職金 会社の退職金を受け取る年の前年以前9年以内
会社の退職金→iDeCo一時金 iDeCo一時金を受け取る年の前年以前19年以内

この違いから、「iDeCoを先に受け取った方がよい」と説明されることがあります。DCを先に受け取る場合の確認期間は9年、退職金を先に受け取る場合は19年で、前者の方が短いためです。

しかし、税制だけで受取順序を決めるのは慎重にしたいところです。

iDeCoを早く受け取れば、その後の非課税運用期間が短くなります。逆に受給を遅らせれば、必要な生活費を別の預金や退職金から出すことになります。

退職所得控除だけでなく、資金を必要とする時期も合わせて判断します。

年金受取なら退職所得控除は使わない

iDeCoを年金で受け取る場合は、退職所得ではなく、公的年金等に係る雑所得として扱われます。この場合、退職所得控除ではなく公的年金等控除の対象です。

そのため、iDeCoを年金で受け取れば、退職金との退職所得控除の重複を避けられる場合があります。

ただし、年金受取が必ず節税になるわけではありません。

iDeCoの年金は、老齢基礎年金や老齢厚生年金、企業年金などと合わせて公的年金等に係る雑所得を計算します。公的年金の受取額が多ければ、iDeCo年金を加えることで課税所得が増える可能性があります。

また、運営管理機関によっては、年金を受け取るたびに給付手数料がかかります。

  • 公的年金の年間見込額
  • 確定給付企業年金などの年間受取額
  • iDeCo年金の年間受取額
  • 年金の受取期間
  • 1回当たりの給付手数料
  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険料や介護保険料への影響

税金だけでなく、社会保険料を含めた手取りで比較します。

一時金と年金のどちらが有利かは人によって違う

条件 一時金を検討しやすい 年金を検討しやすい
退職所得控除 控除に余裕がある 退職金で控除を多く使う
公的年金等控除 公的年金が多い 公的年金が少なく控除に余裕がある
資金需要 住宅費・負債返済など一時的支出がある 毎月の生活費を補いたい
資金管理 自分で取り崩しを管理できる 定期収入として受け取りたい
手数料 一括受取で給付回数を抑えたい 手数料を含めても分割受取を希望する
運用 受取後の置き場所が決まっている iDeCo内での運用を続けたい

一時金と年金を併用できる運営管理機関なら、退職所得控除の範囲を確認しながら一部を一時金にし、残りを年金にする方法もあります。

ただし、併用の可否や割合、受取回数は運営管理機関によって異なります。「全額一時金」「全額年金」の二択だと思い込まず、自分の契約で選べる方法を確認します。

受取時期をファイナンシャルプランへ組み込む

退職金とiDeCoの受取方法を考えるときは、税額の比較だけで終わらせず、60歳以降のお金の流れへ組み込みます。

年齢 主な収入 主な支出・確認事項
60歳 給与、退職金、iDeCo受給開始可能 住宅費、負債残高、住民税
61~64歳 再雇用給与、企業年金など 生活費、健康保険料
65歳 公的年金開始 年金の手取り、介護保険料
66~74歳 公的年金、iDeCo年金など 医療・住宅修繕・生活費
75歳まで iDeCoの受給請求が必要 未請求のままにしない

私自身も、数百万円単位の負債を返している途中です。

将来の退職金やiDeCoがあるからといって、それを現在の返済計画の前提にはしません。今の給与で返済を続け、家族の生活を守ることが先です。

一方、退職時点でも負債が残る場合は、一時金を返済へ充てる選択肢もあります。

その場合も、全額を返済へ回して現金をなくすのではなく、退職後に必要となる生活費、住民税、健康保険料、住宅費を先に確保します。

受取方法の目的は、税金を最小化することだけではありません。退職後に必要なお金を、必要な時期に使える状態にすることです。

40代のうちに確認したい7項目

  1. 勤務先に退職一時金があるか
  2. 確定給付企業年金があるか
  3. 企業型DCとiDeCoの現在残高
  4. iDeCoの掛金拠出開始年月
  5. 勤務先の定年年齢と再雇用制度
  6. 利用中の運営管理機関で選べる受取方法
  7. 60歳から65歳までに必要となる生活費

特に注意したいのが、会社の「退職給付総額」の内訳です。

退職一時金、確定給付企業年金、企業型DCが含まれている場合、それぞれの受取時期と税制上の扱いが異なります。総額だけでなく、制度ごとに分けて確認します。

今日できること

今日は、将来の税額を計算する必要はありません。

まず、iDeCoまたは企業型DCの残高通知、専用サイトを開き、次の項目を一つ確認してください。

掛金の拠出を開始した年月

次に、勤務先の退職金について、分かる範囲で次のようにメモします。

  • 会社の定年年齢
  • 退職一時金:あり・なし・不明
  • 企業年金:あり・なし・不明
  • 企業型DC:あり・なし・不明
  • iDeCoの掛金拠出開始年月

この5項目が分かれば、退職金とiDeCoの受取時期を考える土台ができます。

「一番税金が安くなる年」を今から決める必要はありません。

まず、自分がどの制度から、いつ、どのようなお金を受け取る予定なのかを分けて把握する。それが、退職金をファイナンシャルプランへ組み込む最初の一歩です。


本記事は2026年8月31日時点で確認できる国税庁、財務省、厚生労働省およびiDeCo公式サイトの公表情報をもとに、退職金と確定拠出年金の一般的な受取方法をまとめたものです。退職所得控除額、重複期間、源泉徴収税額、住民税、公的年金等に係る雑所得および社会保険料への影響は、勤続期間、掛金拠出期間、受取額、受取順序、過去の退職手当等によって異なります。受取時期を変更する前に、勤務先、運営管理機関、税務署または税理士へご確認ください。本記事は特定の受取方法を推奨するものではありません。

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