会社員にとって年末調整は身近な手続きです。
毎年秋から冬になると、勤務先から扶養控除等申告書や保険料控除申告書の提出を求められます。その後、12月や1月の給与で「年末調整還付」などの金額が加わることがあります。
一方で、税金が戻るとは限りません。年間の所得税額より毎月の源泉徴収額が少なければ、追加で徴収される場合もあります。
私は40代が見え始めたアラフォーの会社員です。FP3級・簿記3級を取得し、現在はFP2級を勉強しながら、お金について学び直しています。
同時に、数百万円単位の負債を返しながら、家族の生活と老後資金づくりを両立しようとしている途中でもあります。
年末調整の還付金を臨時収入として使う前に、なぜ戻ったのか、反対に追加徴収が起きるのはなぜかを理解しておくことが大切です。
この記事では、2026年分の制度を前提に、年末調整の仕組みと年収500万円の会社員を使った計算例を整理します。
先に結論:年末調整は所得税の過不足を精算する手続き
会社員の給与から毎月差し引かれる所得税は、その月の給与と扶養親族等の人数を基にした仮の金額です。
1年間の給与と所得控除が確定した後、勤務先が年間の正しい所得税額を計算し、毎月納めた合計額との差を精算します。これが年末調整です。
| 状態 | 年末調整で起きること |
|---|---|
| 源泉徴収した所得税が年税額より多い | 差額が還付される |
| 源泉徴収した所得税が年税額より少ない | 差額が追加徴収される |
| ほぼ同額 | 大きな還付・追加徴収はない |
還付金は会社からの賞与ではありません。毎月多めに納めていた所得税が戻ったものです。
毎月の源泉徴収は年間税額の仮払い
勤務先は毎月の給与や賞与を支払うとき、国税庁の源泉徴収税額表などを使って所得税と復興特別所得税を差し引きます。
この時点では、1年間の給与総額や生命保険料控除、地震保険料控除、年の途中で変わった扶養状況などがすべて確定しているとは限りません。
そのため、毎月の源泉徴収額を12回分足しても、そのまま年間の正しい所得税額になるとは限りません。
年末調整の計算は5段階で考える
- 1年間の給与収入を集計する
- 給与所得控除を差し引き、給与所得を求める
- 基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引く
- 課税所得に所得税率を掛けて年間税額を計算する
- 毎月源泉徴収した税額の合計と比較して精算する
給与の額面から所得税率を直接掛けるわけではありません。「給与収入」「給与所得」「課税所得」は別の金額です。
2026年分の基礎控除は最大104万円
2026年分は、合計所得金額489万円以下の人について、基礎控除が104万円となる時限措置が設けられています。
給与所得控除の最低保障額も改正されています。2025年以前の記事を参照すると、基礎控除や給与所得控除の数字が異なる場合があるため、対象年を確認する必要があります。
なお、所得税の基礎控除104万円を、住民税の計算へそのまま使うことはできません。住民税の基礎控除は別に定められています。
年収500万円の会社員で年税額を試算する
次の条件で単純化して計算します。
- 給与収入:500万円
- 給与所得控除:144万円
- 基礎控除:104万円
- 社会保険料控除:75万円
- 配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、住宅ローン控除などは考慮しない
1.給与所得を計算する
給与収入500万円
-給与所得控除144万円
=給与所得356万円
2.課税所得を計算する
給与所得356万円
-基礎控除104万円
-社会保険料控除75万円
=課税所得177万円
課税所得は、税額計算上1,000円未満を切り捨てます。この例では177万円のままです。
3.所得税額を計算する
課税所得177万円は、所得税率5%の区分です。
177万円×5%
=8万8,500円
4.復興特別所得税を含める
8万8,500円×102.1%
=9万358.5円
年末調整の年調年税額は、所得税と復興特別所得税を合わせた額について100円未満を切り捨てます。
9万358.5円
→年調年税額9万300円
前の記事で所得税を仕組みとして説明した際は、単純計算の約9万358円としました。年末調整の実務では100円未満切捨てを反映するため、この例の年調年税額は9万300円です。
還付になる場合
1年間に給与から源泉徴収された所得税等が12万円だったとします。
源泉徴収税額12万円
-年調年税額9万300円
=還付額2万9,700円
この2万9,700円が、勤務先の給与などを通じて戻ります。
還付時期は勤務先によって異なり、12月給与、12月賞与、1月給与などに反映されることがあります。
追加徴収になる場合
1年間に源泉徴収された所得税等が8万円だった場合は、年調年税額より1万300円不足します。
年調年税額9万300円
-源泉徴収税額8万円
=追加徴収1万300円
追加徴収は間違いや罰金とは限りません。毎月の仮払いが年間の正しい税額より少なかったため、その不足分を精算しています。
還付が増えやすい主なケース
- 生命保険料控除や地震保険料控除を申告した
- iDeCoの掛金を小規模企業共済等掛金控除として申告した
- 年の途中で扶養親族が増えた
- 配偶者控除・配偶者特別控除の対象になった
- 住宅ローン控除の2年目以降を勤務先で手続きした
- 賞与などから多めに源泉徴収されていた
控除証明書や申告書を出し忘れると、年末調整へ反映されない場合があります。
追加徴収になりやすい主なケース
- 年の途中で扶養親族が減った
- 配偶者の所得が見込みより増え、配偶者控除等の対象外になった
- 扶養控除等申告書の内容に変更があった
- 毎月の源泉徴収額が少なかった
- 転職時に前職分を含めて精算した結果、不足が生じた
還付額が前年より少ない、または追加徴収になったという結果だけで、勤務先の計算が誤っているとは判断できません。前年との給与、扶養、控除の違いを確認します。
年末調整の対象となる人・ならない人
年末調整は、原則として勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、年末まで勤務している人が対象です。
ただし、給与収入が2,000万円を超える人は対象外です。
年の途中で退職した人は原則としてその勤務先では年末調整を受けませんが、死亡退職、著しい心身障害による退職、12月支給後の退職など、一定の場合は対象となります。
一定のパートタイマーなどが年の途中で退職し、その年中に受ける給与総額が136万円以下で、退職後その年中に他の勤務先から給与を受ける見込みがない場合も対象になることがあります。
転職した人は前職の源泉徴収票を提出する
年の途中で転職した場合、現在の勤務先は前職の給与と源泉徴収税額を含めて年末調整します。
そのため、前職の源泉徴収票を転職先へ提出する必要があります。前職分を確認できなければ、勤務先で年末調整できず、自分で確定申告が必要になる場合があります。
退職者への源泉徴収票は、原則として退職後1カ月以内に交付されます。届かない場合は、まず前の勤務先へ確認します。
年末調整では対応できず確定申告が必要なもの
- 医療費控除
- 寄附金控除のうち確定申告をするもの
- 住宅ローン控除の初年度
- 雑損控除
- 年末調整へ間に合わなかった控除
- 一定額を超える副業所得がある場合
- 2カ所以上から給与を受け、所定の条件に該当する場合
年末調整を受けた人でも、必要に応じて確定申告を行います。
源泉徴収票で確認したい6項目
- 支払金額:1年間の額面給与に近い金額です。
- 給与所得控除後の金額:給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得です。
- 所得控除の額の合計額:基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除などの合計です。
- 源泉徴収税額:年末調整後の所得税と復興特別所得税です。
- 住宅借入金等特別控除の額:住宅ローン控除が反映されているか確認します。
- 摘要欄・社会保険料等の金額:扶養親族やiDeCo掛金などの記載を確認します。
支払金額は手取り額ではありません。給与所得控除後の金額も、銀行口座へ振り込まれた金額ではありません。
還付金を家計へどう組み込むか
還付金は、毎年必ず同じ金額になる収入ではありません。給与、控除、扶養、源泉徴収の状況が変われば金額も変わります。
私自身も数百万円単位の負債を返している途中です。還付金があれば返済を進めたい気持ちはありますが、全額を勢いで使う前に、家族の生活費と近い将来の支出を確認します。
- 還付額と理由を確認する
- 翌月までの生活費を確保する
- 税金・保険料などの予定支出を確認する
- 予備資金が不足していれば補う
- 余裕分を負債返済や老後資金へ振り分ける
反対に、追加徴収があった場合は、新たな借入れで補う前に、給与明細と源泉徴収票を確認し、翌年に備えて少額を家計へ織り込みます。
今日できること
まず、前年の源泉徴収票と直近の給与明細を用意してください。
前年の源泉徴収票
支払金額:
給与所得控除後の金額:
所得控除の額の合計額:
源泉徴収税額:
今年の給与明細
所得税の累計:
扶養人数:
保険料控除の提出状況:
iDeCo掛金の申告状況:
前年と今年で、給与、扶養、保険料控除など何が変わったかを一つだけ確認します。
還付額を予想することより、「毎月の仮払い」と「年間税額」のどちらを見ているかを区別する。それが、年末調整を自分の家計に結び付ける第一歩です。
参照した公式情報
本記事は2026年9月23日時点で確認できる国税庁の公表情報をもとに、2026年分の年末調整の一般的な仕組みをまとめたものです。本文中の試算は、給与収入500万円、給与所得控除144万円、基礎控除104万円、社会保険料控除75万円などの仮定を置いた概算です。実際の税額は、給与・賞与、扶養親族、配偶者の所得、各種所得控除、税額控除、転職、副業等によって異なります。勤務先の年末調整資料、源泉徴収票および国税庁の最新情報をご確認ください。本記事は個別の税務判断を行うものではありません。

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